阪本麻郁のケルン便り

Sunday, March 30, 2008

教育における文化の可能性


 
 ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州では、学校教育に精神・文化的な要素をより重視する為に2006年より“文化と学校”というプロジェクトを立ち上げ、子供達が身近に文化・芸術に関わる機会を与えている。2007/08年度は、1100のプロジェクトが立ち上げられ、900人のアーティストがこれに携わっている。学校とアーティストが共同して独自のプロジェクトを企画し州に提案する。造形作家による“私の木”や料理研究家による“ローマ時代の食べ物、飲み物”、画家による“水無しでは生きれない”や舞踊家による“ダンスとアイデンティティーとの出会い”等、内容も非常にバラエティーに富んでいる。
 私も、昨年9月からケルンの隣町フレヒェンにある学習障害や家庭環境により普通の学校で学習することが困難な子供達の為の学校アンネ・フランク・シューレで、“レルネ・イム・ベベーグング−動きの中で学ぶこと”というダンス・プロジェクトを始めた。ダンスの基礎的なトレーニングによって、自分のからだを知り、それを使いこなす方法を見つけ、即興によって自分を表現する方法を増やし、グループで作業することでコミュニケーション能力を伸ばすことが目標。
 プロジェクト初日、「みんなで手をつないで大きな円を作ろう」と言った時、このプロジェクトがいかに困難であるか気づいた。子供達は、相手を選んだり、喧嘩を始めたりで手をつなぐことがとても難しい。そして喧嘩も相手を蹴る、殴るといったかなり暴力的なもので、子供達の中に鬱積している“怒り”が見える。そこで、“押し合い”というゲーム(二人で両手を合わせて押し合う)をしてみると、“怒り”を多く持つ子供は、相手を押す力が強い。ルールの中で戦ったのだからもちろん「すごい良いパワー出てたよ」と思いっきり褒めると、子供達はすごいうれしそうな顔をでにこっとわらった。半年たった今、子供達は、少しずつダンスを通じて、自分を尊び、相手を尊ぶことを学んでいる。
*京都新聞2008年3月投稿