都会の花園
ドイツは、初夏。公園はもちろん、アパートのテラスや中庭、仕事に出かける道ばた、車窓からの景色、ドライブ中の高速道路脇、至る所で緑の力を感じさせられる。植物達は、ドイツの長い冬を凌ぎ蓄えた力を、太陽の光によって目覚めさせ、新しい葉は、より光を求めて空間に広がり、茎や枝は新たな空間を求め空へ伸び、根は水を求めて地下深く成長する。自然の力を体感できる季節の到来だ。
ケルンは、シュタット・ガーテン(市立公園)、フォルクス・ガーテン(市民公園)を始めとする、大小さまざまな素晴らしい公園が点在する街だ。また、ケルンと他の街をつなぐ高速道路脇は、防音壁ではなく林や森が広がり、自然の防音壁、空気を浄化する役割を果たしている。そして、最近気づいたのが、街に住む人達の個人レベルでの、自然への感心と楽しみ方だ。
ドイツの都会にあるアパートメントは、殆どの場合正面入り口は車が通る道路に面している。表側からは見えないが、建物裏側には緑豊かな中庭、テラスがある。都会における、“秘密の花園”的存在である。壁面にツタや藤、ぶどう、キューイをはわせ、リンゴやさくら等の大きな木が茂っている。都会の喧騒を忘れさせてくれる裏庭向きの部屋は、ドイツ人にとても人気がある。
私が今住んでいるアパートメントは、裏庭向きのうえに、一部屋分あるんじゃないかと思わせるほど大きなテラスで、大家さんが大事に育てているぶどうとキューイが元気にしげっている。このテラスを見て、一目惚れしたと言っても大袈裟ではない。夕暮れ時に木に集って来る鳥の声を聞きながら1人静かに一息つく時、心が洗われる気がする。
不思議な事に、このアパートメントに住みだしてからというもの、前より頻繁に友達が訪れる。近くまで買い物に来たからだとか、仕事帰りに寄っただとか、ふらっと訪れてうちのテラスでコーヒーやビールを飲みながらくつろいで帰っていく。緑というのは、人を和ませる力、人も含めて動物を集める力もあるんだなあと実感する今日この頃である。
*京都新聞6月投稿


